パラレル通信

composer/Gaspar Knowsの中のひとり/神楽音楽研究中。 平日は某ゲーム会社にいます 連絡→outtakesrecords@gmail.com

構造化された即興(structured improvisation)について

構造化された即興(structured improvisation)について

即興演奏をする人の頭の中には不確定性の世界が生まれている。
・未来はこうなるだろうという予測とその外部からくる不確定の要素の混在
・未来はこうなるだろうという予測とそれに基づいたいくつかのルートの選択
・未来はどうにもならないという受け入れとその外部からくる不確定な要素による形骸化
・未来はどうにもならないという受け入れとそれに基づいたいくつかのルートの放棄

ハーモロディクス理論は心理に基づいた構造構築を行い、M-BASEはリズムに基づいた構造構築を行う。

BADBADNOTGOODの新作TALK MEMORYがとても素晴らしいので最近よく聞いている。インタビューを読むと“構造化された即興“という言葉が出てきた。

確かにアルバムの曲を聴くと、即興的なフレーズと構造化された楽曲がパラレルに提示された感覚に陥る。

あらかじめ作曲されたものと、それに対する即興の混在。
または、構造化の引っ張られるか、抗うか、その選択を常に迫られた状態での演奏。

ライブパフォーマンスでは当たり前のように思われる上記のような構造を録音芸術に落とし込むにはどうすればよいのだろうかと考えてしまった。

エリックドルフィーの有名なセリフに“When music is over, it's gone in the air. You can never capture it again.” とあるが録音にもそういった感覚があれば素晴らしいだろうと思う。

再生機器の停止ボタンを押す。
その瞬間に音楽は空気中に分散していく。再び再生ボタンを押す。
しかし、あの瞬間に合った感覚は二度と戻らないだろう。

そういう音楽を聴いていたい。作りたい。