パラレル通信

composer/Gaspar Knowsの中のひとり/神楽音楽研究中。 平日は某ゲーム会社にいます 連絡→outtakesrecords@gmail.com

染井野住宅地 幻想紀行

祝日で天気も良いので思い立って小旅行へ行った。(日帰りで千葉で散歩するだけだが)

 

京成臼井駅の南口の丘にある染井野住宅街。

南口の王子台にあるブックオフの品揃えが良いのでこの辺りには遠征がてら良くいく(サガンの短編がなぜかいっぱい売っている不思議なブックオフ)

 

ブックオフには最近までハードオフが併設されていて、中古楽器が結構あったので

本やCDのついでに安い楽器を買ったりしていたのだが、最近そのコーナーがホビーオフになってしまった。

 

というわけでブックオフはスルーしてさらに丘を南下して染井野住宅街まで行って見た。この辺は前に歩いたことがあって雰囲気も良くて静かなので全然近所ではないが散歩向きで好きな道だなと思っていた。

 

f:id:thebachs:20220223212522j:plain

染井野の住宅街


今日歩いて見て気づいたのが、

住宅街の車道がL字をいくつも繋げたような構造になっているのに対し、

人や自転車が通れる歩道はL字の角の部分でつながっていて通り抜けられるようになっていた。(車がL字に沿って進まないといけないのに対し、人はL字の角の部分を突き抜けられるのでそのまま反対側のL字の角に出られ擬似的な直線の道ができていた。

おそらく住宅街での車と人の接触事故を防ぐための対策なのだろう。

いわゆる路地裏の道とは違い、家と家の間を表の道としてショートカットできて面白かった。(こういう構造の街はけっこうあるのだろうか。すごくよい考えだと思った)

 

また、その構造からどの道をみても同じに見えて(L字の角を抜ける、同じ反対向きのL字の道が現れる)、鏡の世界のような不安定な幻想感があった。

 

実際、突き抜けの道を自転車で通り過ぎて行った小学生の二人組がまた戻ってきて

"たぶんこっちで合ってるよ"と言ってとあるL字のブロックで曲がっていく様を見かけた。

 

この街で暮らせるのは楽しいだろうなと思った。

角の先に何があるのかわからないという感覚は自分が散歩をする理由のひとつ。

(国木田独歩が武蔵野の中で似たようなことを書いていてすごく共感した思い出がある)

 

もちろん、すべてが同じ構造になっているわけではなく、たまに大通りを挟んだり、公園が現れたりする。

 

そして一番驚いたのが公園の端に人しか通れない道があって(今までのL字を突き抜ける道と違いこの道は路地裏のような感じで家の裏を通るようになっていた)

ここを抜けると四方を住宅に囲まれて表のL字の道からは隠れる形で広場があった。

 

路地裏のような道はこれまでの明るい表の道との対比もあって明らかに異質な雰囲気があった。初めての人は、これまでの表の道のルールから外れているこの道は通らないのではないかと思う。(私有地にも思えるので)

 

自分は道の先が気になってグイグイ進んでいく方なので、そのまま歩いていったが

まさか広場があるとは思わなかったのですごく驚いた。

何かの本でヴェネチアにも似たような住宅に隠された広場があると読んだことを思い出した。

 

四方が家なので球技などで遊べるような場所ではないし、そもそも住んでいる人でも知らない人がいるのではという感じの場所なので当然人もいなくて、住宅に縁取られて音も消え、本当に異界に迷い込んだような感じがして楽しかった。(少しして掃除のおじさんがきて、普通に公共の場として管理してるんだと知った)

 

街を散歩していると面白いのが時代の違うものが重層的に一つの場に存在していて、

例えば、家の塀の内側に電柱があったりする場所は電柱の後に家ができたとわかるし、路地裏を抜けないとアクセスできない神社なんかもあったりする。

 

だれか一人の意思で街のすべての構造を作り出すことはできないのでそういった重層的な風景が見られた時は、過去の街を少し思って見たりするのも楽しい。

(東京は更地にしてマンションを建てたり、お店が潰れても別の店が入るだけだったり、そもそも頻繁に建物を壊したり、テナントが変わったりするので重層的になり得ないのが寂しい。暗渠とかを巡ってみるのは楽しいが)

 

昔、住宅地の中に森のような場所があって行ってみようとしたが、

アクセスできる道がどこにも見当たらず、目の前にある森にたどり着けない感じがすごく虚構感があった。

 

目に見えるのにさわれない領域。

 

かなり大きな森で誰かの庭とも思えなかったが、あそこもひっそりとアクセスできる道があったのだろうか。