arauchi yuのライブを見に渋谷へ行く。
その前に時間があったのでユーロスペースでレオスカラックスのアネットを観る。
カラックスはポンヌフの恋人が苦手でそれ以来観ていなかったがスパークスが音楽、原案ということで観た。
流れで初期の作品も見たが、この人は話やフレーミングは過去の映画をシネフィル的にすくい取って場面を作っているように感じた。ただ、そこに(あきらかにわざと)イマジナリーラインをぶち壊すようなカットが挿入されることで過去の映像を突き抜けて画面のこちら側へ向かうような感覚になる。
そこに惹かれる人がいるのはわかるが自分としては、イマイチ乗れない感覚が拭えなかった。
アネットに関してはそもそもミュージカルが苦手なので、、
その後ライブへ。
arauchi yu - Siseiのライブは本当に素晴らしかった。
整理番号が一桁だったので客入り大丈夫か?といらぬ心配をしながら
渋谷クワトロへ行ったが、物販のところに一人も人間がいなくてビビった。
ご時世も相まってディストピアな感じでテンションが上がる。
ライブ開始前には人も集まって満員くらいになっていて
こういう音楽性で人が集まるのは東京の少ない利点だなと思う。
(自分の励みにもなるので、、)
ライブについてはあの音源をどう演奏するのか気になっていたが、
去年に一度延期になったこともあり、アレンジを大幅に変えた曲もあった。
いきなりClose to youのサンプリングから始まって驚いたが
(最近バカラックを聞き直しているので、自分の実生活とリンクした)
そこから、曲で使われているサンプリングフレーズへ展開していくアレンジになっていて
感動した。サンプリングネタが元の姿から変容して別の曲になる瞬間、それに気づいた時のあの一瞬。
公開されているインタビューでも語られていたが、サンプリングされたフレーズは音源ではわざと目立つように(演奏とまざりあわないように)イコライジングしているようで、サイボーグというかコラージュというか別の世界のものが同時に存在しているような感覚に陥る。
ライブではそれがClose to you→断片が切り取られ→楽曲のサンプリングフレーズに変容するという流れだったので、異世界へ侵入していくような感覚になってさらに素晴らしかった。
ceroの方でもよくテーマとなるパラレルワールドであるが、あちらは言葉による力が大きい。
CTCなどの荒内作曲のものでも言葉をきっかけに曲がパラレルワールドへ侵入していく様は今回のライブへと通ずる感覚かもしれないが、やはり言葉ありきに見える。名曲だけど。
Siseiは歌詞はあっても英語で、だからこそ、音だけで異世界の存在を感知できるのはすごいと思った。明らかにサンプリングとわかるフレーズは生で観ることで本当に別の世界の音が
間違えてスピーカーに紛れ込んできたように見えた。そしてそれに合わせて舞台上の楽団が即興演奏を行なっているような。。
もちろん、リズム面を含めてかなり練り込まれた編曲がなされているが
それにもかかわらず、サンプリングフレーズとのバランスによってなんとも言えない自由な感じがあった。(少しAnimal Collectiveが2009年ごろにやっていたSP-404だけのライブを思い出しす。あれもMIDIの同期はなく、各メンバーがサンプリングされたBPMの決まったフレーズをパッドを押して音を出すことで絶妙にずれていて、サンプリング音楽なのに身体性があった)
ライブ中にメモをとったのは初めてかもしれない。
それぐらい自分のやりたいことを目の前でかなり理想に近い形で見せられてしまった。
最後にアーサーラッセルのThis is how we walk on the moonをやって、心の底で同意した。
(フランクオーシャン以降の世界で、HipHopやトラップも落ち着いてきたいまこそ、この曲だよなと。)
次の週にはリチャードパワーズの黄金虫変奏曲が届いて今読んでいるところだが
こちらも異質なものをくっつけるようなイメージの小説で面白い。
現実世界に異物を侵入させるために、私は曲を作っているのだと再認識する。