パラレル通信

composer/Gaspar Knowsの中のひとり/神楽音楽研究中。 平日は某ゲーム会社にいます 連絡→outtakesrecords@gmail.com

うみべでぼくらはなかよしだったか

GWは11連休だったので金曜日に浅草でお土産を買って富山へ帰省。

前半は神通川を歩いたり、日本橋丸善で買っておいた本を読んだりして過ごす。来週発売の米澤穂信の小市民シリーズがなぜが本屋の店頭に売っていて購入。最後の冬季限定の話。結構良かったが割と予想がつく(これまでのシリーズでなんとなくほのめかされていた話)でやはり秋期限定がすごすぎたというのもあって少し肩透かしを食らう。というかまだ続けられそうだなと思ってしまったが一旦一区切りのようだ。

 

他は沢木耕太郎長野まゆみ岸田秀高山羽根子等々、本屋の店頭で適当に購入したものを読む。

 

ずっと天気が良かったので路面電車でレコ屋にいったり、古本屋を見たり。レコ屋で購入したDORI CAYMMIというギタリストの映画音楽のカバー集がとても良かった。少し90年代のリバーヴ感があるアレンジの曲があってギターのアルバムとしては珍しい質感で良い。シティポップ的ではなく90年代的なリバーヴ感って結構面白いと最近思っている。CSN&Yのセカンドもたまたま聞いていて同じことを思った。ちょっと前まではリバーヴかけとけばいいみたいな音響に聞こえてダサく思っていたのだが、自分でやろうとすると水浸しみたいな反響になるので結構難しい処理をしているのかもしれない。

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本に飽きたら温泉に行ったり、電車で少し離れた街へ行って散歩したりする。

そしてまた帰り道にまた本を補充する。たまたまブックオフで見つけたボブグリーン、ピートハミルという作家のアメリカ、ニューヨークについての本をそれぞれ買う(多分同じ人が売ったのだと思う)どちらも80年代に書かれたものでビートニクの後の世界だ。話は少し感傷的すぎるがビートニクな感じを思い出して色々読みたくなる。

 

なので流れでジョン・ファンテの塵に訊けを購入。これがとても良い。

まだ途中だがほとんど散文的という文体に思考の流れをそのまま文章にしている感じがまさに自分の求めているビートニクといった感じだが、それだけでなくかなりクズな主人公の視点が支離滅裂に行ったり来たりする感じが清々しくて良い。

 

GW後半は諏訪大社を巡る旅行。神社はどこも美しく、人も少ないので快適だった。諏訪の旅館に泊まったのだが、温泉もよし食事もよしでまた来たくなった。調べると一人ビジネスプランで1万もあるらしいので東京からも近いし夏くらいに行こうかと思う。

諏訪二日目は上諏訪の街を散策する。猫が人馴れしていて撫でさせてくれたり、人での少ない街をいい天気の中歩いたりしてとても心地よく過ごす。上諏訪は駅から諏訪湖まで5分くらいでアクセスできるし温泉もたくさんあって最高だなと思った。

駅の北口の方にめちゃくちゃ急な階段があってそこからでしかアクセスできなそうな丘の上の住宅街が見えた。行こうと思ったが階段を掃除されている方がいて邪魔になるので遠慮する。今度来た時に行きたい。多分あそこからだと諏訪湖を一望できそう。

 

諏訪湖

 

諏訪湖周辺は鳥が多くいた。トンビの鳴き声や鵜、カルガモ、鷺、キジバト。人が少ないとその分街のざわざわも消えて鳥の声がよく聞こえる。よく晴れた日のコンクリートにはトンビが旋回する影が映る。ずっと高いところで街を眺めるトンビの目を想像して歩く。

富山の神通川にはキジがたくさんいた。鳥の声はそれぞれ特徴があって、子供の頃の記憶として声は覚えているがどれがど野鳥の声なのかは大人になるにつれて分かって行った。キジバトの声を聞くと夏休みの午後の何も予定がなくてBSでアニメを見ていた日陰の部屋を思い出すし、トンビの声を聞くとGWに田んぼに水が張られた景色の中を自電車で走っていた記憶が蘇る。目に見えるものとそこでなっている音というものは意外と強度をもって結びついている。東京の喧騒にいると鳥の声を聞くことは少ないがそれでもイヤフォンを外して散歩をすると何かしらの生物の音は聞くことができる。人間はそれぞれが勝手に話しているからそこに偏在する力はないが、鳥たちの声は一つの一貫性を持って時間を超えて記憶を繋げてくれる。

 

特急あずさで東京に戻る。

東京ではゆっくりしようと決めていたのでずっとベランダで本を読んで過ごす。

夏目漱石の"こころ"を一気読みしたりする。

映画館に行こうかとも思ったがGWで混んでいそうなのでやめる。

家で相米慎二のお引越しを見る。傑作。京都の景色の美しさがきちんと納められている。そして90年代付近の相米慎二を今一度再確認しなければならないのかもと思ったりもした。台風クラブやションベンライダーの引っ張られがちが作家だと思うが、お引越しの中で多用されるまわりこむようなカメラやそこで展開する長回しの中のキメのカット繋ぎ方はすごい。80年代の頃のある種無理やりやっていた垂れ流しの長回しとはまた違う質感。

そういえば市川準の映画がいくつか配信されていてどれか見ようか悩んでいると2000年代中盤以降(春、バーニーズであたりから)一気に画質が綺麗になっていて見る気が起きない。単純にフィルムからデジタルになったのだろうがこの年代の映画監督は結構こういうところでつまずいてしまう。(青山真治とか黒沢清とか)

自分は90年代の邦画フィルムの質感が好きなので過去にそういった質感で傑作を取っていた作家たちがデジタルなものに移行して行くのは少し違和感を感じてしまうのかもしれない。相米慎二の風花はデジタルかフィルムかわからないが違和感なく見れた記憶。

 

なのでなんとなく90年代の邦画を掘って見たい気持ちになって来たが、U-NEXTで探しても圧倒的に少ないことに気づく。塩田明-どこまでもいこう、月光の囁き、三月のライオン(元ネタの映画の方)、櫻の園がんばっていきまっしょいすらない。

そういえば富山の行きつけだったツタヤも2件閉店していて、意外と見たい映画が見れなくなるぞという危機感が出て来ている。(でもDVDこれ以上増やしたくないんだよなーとも思いつつ)