パラレル通信

composer/Gaspar Knowsの中のひとり/神楽音楽研究中。 平日は某ゲーム会社にいます 連絡→outtakesrecords@gmail.com

2023-01-01から1年間の記事一覧

黄金虫変奏曲

海外帰り、北京空港の乗り継ぎを完璧にこなして3時間くらい空きができたので空港を散歩したり夏目漱石の三四郎を読み進めたりしていた。 帰国後、近所のコンサートホールでオラフソンと清水靖晃がそれぞれゴルトベルク変奏曲をやるライブがあったので行った…

アメリカの夜

夏目漱石を読み返している。本屋でなんとなく草枕を読んだら文章が素晴らしくて改めて年代順に読むことにした。今は三四郎まできた。 草枕を誤読すると、単純な芸術讃歌のように読めるが、夏目漱石自身は草枕の画家のような生き方が正しいとしていない。物語…

front and back

割と難解な曲を書いていて、自分でこんがらがってきている。 こないだスタジオで新曲を合わせてそれが本当に良くて意欲が湧いているので今の曲も良くしたいという欲もある。 最近は暑さも落ち着いて散歩が長くできたり、その合間に音楽も聞けるのでどんどん…

都会の密林の語り部(2)

暗闇を失った街で、どこに謎を探せば良いのか。 夜の公園を散歩する犬たちと、草陰に隠れる猫たちの会話が人知れず寝静まった都会の夜に響いている。風が運ぶ無味無臭の夜の気配に、それでも少しだけ森の木々の深く濃い薫りをかぐ。 風が凪いでいる夜に、歩…

都会の密林の語り部 (1)

晩夏の夜を歩く。 kip hanrahanの音楽を聴いているとフレーズとフレーズのつながりがないように感じて混乱する。ニューヨークの街のいたるところにマイクを仕掛けて、話し声やサックスプレイヤーの路上演奏や車の喧噪や、闇を流れる川の音が無作為にミックス…

PARADISE EXPRESS

山下敦弘監督の1秒先の彼を観た。ぼくのおじさん、ハードコアと自分的にあんまりな感じだったのでほとんど期待せずに観た。前半はやっぱりダメかと思ったが後半に視点が切り替わってからが本当にすごくてずっと鳥肌が立ちっぱなしだった。前半の恋愛映画のパ…

SAKURA +PLASTIC

蓮實重彦と島口大樹を読んでいた。 ゴダールの映画において画面や音、演出の意味を無視して(そんなものはないとして)ただ画面を見るという方法で観る。 勝手に逃げろ/人生、アワーミュージーックを観直していたが、映画から何か人生の示唆をもらおうというの…

国道沿いに火花が散り、

ジョンコルトレーンとエリックドルフィー の共演盤が出たので毎日聴いている。 エルヴィンジョーンズのドラムがでかくて最高。 www.youtube.com パワプロに脳を支配されていて一日10時間くらいやっていたが流石に飽きてきて通常の暮らしに戻る。本屋でいくつ…

水の中の八月

tofubeatsの水星が出た時に何が良いのか全くわからなかった。正確には曲としては良いなとは思ったが一部が熱狂している意味が理解できないといった感じ。どちらかというとダサいコードにいなたいラップが乗っててサビがあるという一番ダサい頃の日本のヒップ…

光る街

有吉佐和子の乱舞を読んだ。途中で別の小説の続編であることに気づくがそちらもいつか読みたい。有吉佐和子は割と時勢を読んだ小説を書いているイメージだが、現在に読むことでその時代性を取っ払って文章の力だけでもきちんと読めるのがすごい。 氷室冴子の…

無事帰国。海外の田舎を歩き続けて海にたどり着いた。

逃亡前夜

菊次郎の夏が観たくなさすぎて小津安二郎の晩春を観たらあまりに良すぎてその辺りの映画を観直す。晩春、洲崎パラダイス赤信号、永遠の人、東京物語。 ついでに蓮實重彦の小津安二郎の本も再読。 小津安二郎をほんわか映画みたいな感じで捉えている人ってい…

Drive Your Ocean

北野武を順番に観る。今週は3-4X10月〜ソナチネまで。 3-4X10月は素晴らしいが改めて観るとどの作品も徹底して空っぽだなと思う。(別に悪い意味ではなく) 映画として決まっているシーンや演出が連続して繋げられるだけできちんと作品になり得るという一つの…

25時のバカンス

壺井栄の二十四の瞳が良すぎてびっくりした。映画しか見たことがなかったので、たまたま本屋で原作を見かけて買ってみたのだがリチャードパワーズが”舞踏会へ向かう三人の農夫”で膨大な文量を使って表そうとしたことをとても端的に行なっていると感じた。一…

PLAYTIME

今週になってから、なぜか立て続けにお誘いの連絡が複数来て少し忙しかった。(ライブとかご飯の誘いだけど)。 パスポート関係の処理で久々にゆりかもめに乗ってビッグサイト周辺へ行った。 ceroの新譜が出ていたので道々で聞いていたが、ポリリズムを使って…

Forever Dolphin Love

ジュリアングラッグの森のバルコニーがあまりに良くて読書欲が復活した。 森のバルコニーを読み始めた時はブツァーティのタタール人の砂漠を少し思い出したが、あれとは違い確実に物事が進んでいく様が描かれる。ただしそこの俯瞰した視点はなく、あくまで語…

なし

ゼルダの新作をやっていたら休日が終わっていた。。

クラウドコレクター

GWは実家に帰っていた。長期連休はいつも実家で本を読んで散歩してレコード屋に通ってハードオフで楽器を買って終わるわけだが今回も同じであった。 最近は電車で生まれた街に行って歩きまわって遊ぶのが好きでよくやっているのだが、草むらだった場所や田ん…

記憶のすべて置いて行けるか

連休だがバンド練。新曲を合わせる。 かなり難しい曲だが良い感じになりそう。 連休だからかいつもよりスタジオが混んでいた。少しずつ生演奏の音楽をやる人が戻ってきている感じがする。 ゲーム会社で働いているが自分はそこまでゲームをやらないし、ゲーム…

エドワードサイード

諸々の選択をするタイミングで悩む。 逃避行として大佐倉に行ったがyoutuber?の人が秘境駅として撮影したりしていてげんなりする。(本当に喋りながら撮るんですね。。) 夢でマンションに植物が侵入してきてエレベーターに乗ろうとしたら見たこともない虫が…

ruin city

福永武彦の廃市を大林宣彦が映画化しているが、久々に観ると幻想的な街の作りと物語の予感に満ちた序盤の10分くらいの流れと、それが単純な人間関係の矮小さに収集されていく感じが両方あって傑作とは言えないがたまにみかえしたくなる映画だ。 棚を漁ったら…

Back to the Forest

曲ができたので日曜日は気分転換に小旅行へ行った。 いつもおりる京成臼井をスルーしてその先の大佐倉駅へ。 鬱蒼とした森の匂いを久しぶりにかいだ。少し夏の匂い。 城跡の森の中を抜けて少しひらけた場所に出た瞬間、地元でしか感じたことがなかった、人間…

LEFT BANK

堀江敏幸の海岸忘日抄を読んでいる。流れる川にとどまって暮らすという矛盾は矛盾ではなく都市生活者の地下鉄とマンションの対比にも思える。 対岸は対岸として認識するためには右岸/左岸側のどちらかに属する必要があり、ビルなどから俯瞰するとその左右性…

Frontier/Line

本屋で"サバービアの憂鬱"が復刊していたのを見かけたので購入。 ついでに郊外つながりで堀江敏幸の"郊外へ"も一緒に買う。 雨の合間に本屋へ pic.twitter.com/LGg1knqXaR — Akira.Ikeguchi (@outtakesrecords) 2023年3月25日 郊外、フロンティア、サバービ…

How small a thought it takes to fill a while "LIFE"

なんとわずかな思考がその全体を満たすのか。 完璧な、隙のない、完全に、美しいものを見たことはない。 途中であり、一瞬の出来事で、未完成のままにある。 そういうものをこれまで見てきた。 その全体を満たすものが、一貫した思考によって貫かれているこ…

優雅で感傷的な日本野球

フィリップロスの素晴らしいアメリカ野球の原題はThe Great American Novel。 野球の話だがBaseballの文字はない。 野球=文学。 旧中川〜荒川沿いを自転車で走った。川沿いに行くと草の香りや春っぽい風が出ていて良い感じになれる季節。 荒川沿いでよくキャ…

-From the dark room-

最近はあまり映画を観るモードでは無かったが、カウリスマキがいくつか配信されていたのでお仕事三部作を観返している。昔、改装前の新文芸坐でカウリスマキのオールナイトで観て以来のものもあったが全部良い。というか、いくつかのシーンが他の映画と混同…

平行都市

磯崎新の"空間へ"とアドルフォ・ビフォイカサーレスの脱獄計画を平行して読んでいた。 脱獄計画の時間の飛び方(記憶の飛び方)が異様で死ぬ運命にある人物がまだ生きている時系列から飛んで一瞬だけ死んで、次の行で何もなかったように語り出すシーンに驚く。…

平日、点滅する信号、人のいない街

バートバカラックばかり聴いている。 改めてバカラックのオリジナルよりカバーや提供曲の入ったアルバムの方が思い入れが強いなと感じる。 ジムオルークがバカラックの曲を集めてカバーしたアルバムが最も好きで購入してから現在まで本当によく聴いている。 …

I know

磯崎新の”建築における「日本的なも」”が面白くってずっと興奮しながら読んでいる。 桂離宮の章で、京都が虚構的だというセンテンスがありとても共感する。 桂離宮 京都の御所を歩いた時、その空っぽさに驚いた。 一般で立入れる場所にあるものはただの砂利…