パラレル通信

composer/Gaspar Knowsの中のひとり/神楽音楽研究中。 平日は某ゲーム会社にいます 連絡→outtakesrecords@gmail.com

平行都市

磯崎新の"空間へ"とアドルフォ・ビフォイカサーレスの脱獄計画を平行して読んでいた。

脱獄計画の時間の飛び方(記憶の飛び方)が異様で死ぬ運命にある人物がまだ生きている時系列から飛んで一瞬だけ死んで、次の行で何もなかったように語り出すシーンに驚く。

磯崎新が終末論に絡めて言及しているような新しい街に内在している終末の姿というものが

一瞬だけ現れる感じを文章で行なっている。

 

4連休だったので何処かに行こうかと思ったが、バンドの練習があるのとなんだか風が強いので前半は家で過ごす。バンドの練習では新しい曲のアレンジをがっつりやれてかなり良い感じ。自分以外の人の曲をバンドでやるのは初めてかもしれない。

 

映画館で適当に選んで見た"月の寵児たち"という映画がとても良かった。

前半はストーリーのない感じがベタベタなヌーベルバーグという感じで寝そうになったが

人物が出揃って少しずつ見えない線が繋がりだしたところからとても面白くなった。

もう一度見たい。

 

日曜日は晴れたので磯崎新つくばセンタービルがあるつくば駅まで出かける。

TXに初めて乗ったが、駅だけ地下化されていて間の区間が地上に出るような設計にしているのは何か意図があるのだろうか。

つくばセンタービル

 

駅を降りてすぐつくばセンタービルが見えてさっと外観と広場を眺める。

南の方角にずーっと続く道が見えたので面白そうでそちらに進む。

 

つくば公園通りという道らしく、つくばセンター前広場からまっすぐ南に伸びて4kmほどの道が続く。その間には国際会議場やJAXAやいくつかの広い公園があって道中の景色も楽しめる。

 

すごかったのが、その公園通りと隣接するように住宅街の道があったことで

役割の違う二つの道が並列に並んでいるのが不思議だった。

 

公園通りは建物の裏側に伸びた形の道なので公園にしかアクセスできず、

ショッピングセンターなどに行くには住宅街の道にそれる必要がある。

逆に移動だけを考えるならこの公園通りを使用すると信号もなく4km近く移動できるような仕組みになっている。(公園通りは高架化されていてその下を自動車の大通りが十字にすれ違うような仕組みにデザインされていた)

 

公園通りと住宅街の道が積層している

まだつくば市の歴史を調べられていないので確かなことは言えないが、

住宅街が先にあり、後でつくばセンター広場や公園通りが作られたのではないかと思った。

平行している二つの道はその新旧の街の姿が同居しているようで、一つの街に二つの街のイメージが重なっているようで歩いていてとても不思議な感覚になった。(公園通りはちょっと京都の下鴨神社の長いまっすぐな道を思い出した)

 

自分がよく行く千葉県佐倉市の染井野住宅街は表と裏が反転する構造になっていてその隙間(面でも裏でもない場所)に抜け道や公園があって歩いていてとても楽しくなる作りだが、

つくば公園通りはそれを上下にして積層構造で表と裏が重なっているような作りとも思えた。

bythebeachs.hatenablog.com

 

しかも、表と裏の世界へのアクセスは隣の道にただ移動するだけで手軽に切り替えられるのがすごい。

また、公園通りは車道と高架で分離されているだけでなく、歩道と自電車の道も左右で分けられていてその道がそれぞれ隠せすする先(目的)を持って作られている形だった。(安全のためというのが第一だろうが、自転車用が舗装された道になっているのに対して歩行者用はタイル敷きのうねる道になっているのも歩いていて楽しい)

自転車と歩道が分かれる道

いくつかあった公園もどれも広大で針葉樹が多くて武蔵野のようでもある。

また、住宅街を抜けると公園通りと平行する区画が未開の空き地が増えてくる。

いわゆる街が途切れる場所にあるこういう草むら、フロンティア、をこんな整備された街中で見たことがなかったので驚く。

前述した佐倉市染井野団地は団地と団地の間に整備されていない区画がいくつもあって、そこにはこういったフロンテイア区画もあるのだが、住宅街とは完全に分離されている。(つまりフロンティアにアクセスするには住宅街を抜けて然るべき道を通らなければならない)

それに対して、この公園通りはいきなりこんな草むらが現れるので、

異界と現世が一気につながるような飛躍を感じる。(後で調べると気象センターの所有地のようだった)

 

並列する空き地

磯崎新も"空間へ"の中で書いていたが虚構としての都市を見る感覚が面白くて

こういった区画に反応してしまう。実際の街とイメージの街が重なって視覚として観れる箇所を探して歩く。そいった意味で、つくば市は上下に街が積層した構造をもっているのでそういう場所は非常に多く観られた。

 

駅に戻って駅前のショッピングモールを歩く。

ここは公園通りとは真逆に迷路のような構造。まっすぐでない通路にいくつものお店、自動ドアから外に出たと思うとビルとビルの間の吹き抜けのアーケードのような場所で、そこにもお店がある。

どちらが面で裏なのかわからなくなる感覚に陥る。

 

たまたま中古CDのお店があったので入ってよくわからんCDをいくつか買って帰宅。

帰り際にTXの駅を地下化していたのは公園通りのような道を見越して電車による道の寸断を防ぐためなのかと考えたりした。そうなると駅の北側にも道が繋がっているはずで

今度行ってみたいと思った。