パラレル通信

composer/Gaspar Knowsの中のひとり/神楽音楽研究中。 平日は某ゲーム会社にいます 連絡→outtakesrecords@gmail.com

PARADISE EXPRESS

山下敦弘監督の1秒先の彼を観た。ぼくのおじさん、ハードコアと自分的にあんまりな感じだったのでほとんど期待せずに観た。前半はやっぱりダメかと思ったが後半に視点が切り替わってからが本当にすごくてずっと鳥肌が立ちっぱなしだった。前半の恋愛映画のパチモンみたいな作りはワザとなのか脚本の宮藤官九郎の影響なのかわからないが、やはり退屈でカットや舞台の作りも安っぽくて全然だなと思っていたら花火が上がって清原伽耶が目覚めるカットがあまりにも良すぎて一気に目が覚めた。遠くに聞こえる花火の音が、京都の街のあらゆる場所へと遍在してゆき、それぞれの時間へと帰結していくその隙間に、映画のカットが入って、時間が止まる。そこで清原伽耶は入り込んだ止まった世界を何の説明もなく受け入れて楽しんでいるのも良い。

そこから先はいいカットの連続で、いい映画をただ眺めるという贅沢で幸せな気持ちになった。正直、前半のフリや後半の回収はほとんど機能していなくて(というか映画には貢献してなくて)いきなり花火のシーンから始まっても自分はこの映画を好きになったろうと思う。もともと台湾映画原作ものなので筋書きはあるのだろうが、あの花火のシーンによって全く別の意味を獲得しているように見えた。(山下敦弘天然コケッコーでもくりぃむレモンでもリアリズムの宿そう言ったことをやれていたわけで、いわゆる企画ものを自分の作品として消化できるのは本当にすごいなと思う)

 

あの花火のシーンをもう一度見るために映画館に行こうかと思っているくらいだ。

 

ゴダールの恋人のいる部屋を買ったので見る。ヌーベルヴァーグ的だがインタビューっぽいカットがやはり良い。