パラレル通信

composer/Gaspar Knowsの中のひとり/神楽音楽研究中。 平日は某ゲーム会社にいます 連絡→outtakesrecords@gmail.com

トレーン、ウクバール

クランチ用の歪みエフェクターとしてBD-2を使っていたが高音のジャリジャリ感がしっくりこなくなって来て代替え機を探していた。

 

Jan Rayはいろんな人が使っていてやなので試しにSuperboltのV2を購入。ケンタウルス系との相性が良くボードに組み込む。

結構、歪みが暴れるので設定に悪戦苦闘するが平日の大半の時間を使いなんとかいい音にできた。ボードの頭にコンプ兼ブースターみたいな役割でおくとかなり良くなった。

 

やっといい感じの音にできたので休日は曲作りを再開。結構疲れる。

 

先週に続いて古井由吉の辻を読む。これも素晴らしい。連作短編のようで全然繋がっていない。一つの短編の中で必ず登場人物の視点が一回変わるという共通項があるが、視点が変わっても記憶が引き継がれているような自己の不一致感が不気味で良い。

やはり、決定的なシーンがいくつかあってそこに痺れたりする。(雪のあかりのシーン、辻で耳元で囁かれるシーン、切り開きの道のシーン)

 

辻を読み終わって、ビクトルエリセの新作の流れでボルヘスの伝奇集を読む。

これもやはり面白い。自分の読書では良く在ることだが前後に読んでいた本が自分の中で繋がっていく。辻、伝奇集はモキュメンタリー的な不安感として繋がる。

同時期に動画でマドレーヌの冒険というものを見ていて感動したのも関係していると思う。

誰かの虚構が現実に現れてそれが虚構で無くなる瞬間を見れた気がする。そしてこの動画を見た人たちでこの冒険が虚構ではなく、かつてからそこにあったものとして受け取られればひっそりと着実にそれは現実世界の中へ広がっていくだろう。

 

【マドレーヌの冒険】矢印を描く方へ - For the person who drwas the arrows - YouTube

チャン・リュルの柳川がU-NEXTに上がっていたので観る。劇場で観ようと思っていたのを完全に忘れていた。当たり前だけど大林宣彦の廃市あるいは高畑勲の柳川掘割物語の頃の街ではなくなっていた。駅前が綺麗で驚く。

映画自体もかなり良かった。ズームのあり方や背中から追いかけるカットはイニャリトゥのバードマンを思い出したが。舟で夜の川を渡るシーンの構図が良かったし、中国映画特有のライティングで闇の中に浮かぶ人物の不安定さが出ているのも良かった。

 

フィルムの質感が好きだが、最近はもうフィルムで撮る人はすくなく、それこそビクトルエリセの新作でさえほとんどのシーンの解像度は高かった。三宅唱は相変わらずこだわっているようだ。

そういえば平日にドミューンで浅野いにおがアンリアルエンジンの話をしていて漫画にもつかわれているんだと今更知る。浅野いにおの新作も気になったので買ったが、デデデデの頃と全く違っていて、アクションシーンも(正直うまいとはおもわなかったが)あまりない感じの表現で楽しめた。写真の読み込みだけでなく、3D化することで構図を探れるというのはかなり可能性があるのではと思った。

 

シンエヴァのドキュメンタリーでも似たような形で人体センサーデータを取り込んでいろんなカットを探っていたなと思い出す。

 

最近の漫画も結構そういう視点で見ると絵が平均以上の人が多くなったイメージがある。うまいというより均一化されているというか、見やすい構図や背景、人物の設置の仕方みたいなものがコード化されていたりするのだろうか。最近買った漫画(8月31日のロングサマー)でほとんど同じ絵のカットアンドペーストだけであとは人物の表情や服装を変えるだけという作品を見て(手抜きではあるのだが)それを物語の構造にうまく当て込んで作品を作っていたのが面白かった。

 

AIがいろいろ言われ始めている流れだが、並行して上記の漫画のように物語に依存した作り方で変えはあまり聞かなそうではあるが、技術と作品をうまく組み合わせている人たちも多く出てきているようにも思う。

 

ただ、まだ傑作というようなすごいものは見つけられていないが。